続・大奥(秘)物語
湯女の子として生まれた美貌のおちさは、下級武士板倉源三郎の目に留まり、西の丸奏者番安部主水正の養女となった。そこで行儀作法を身につけたおちさは大奥に上がる事となった。十代将軍家治は初々しい美貌のおちさをこよなく愛し、異母姉のおしのの嫉妬心を煽ることとなる。中臈おしのは異母姉妹としてではなく女としておちさを憎んだ。それを知った家治はおしのを書院番遠藤弥左衛門の妻として下げ渡した。好まざる力とはいえ、おちさは大奥を征服する。だが、おちさの天下はあまりにも短かった。家治があっけなく世を去ったのである。家斉が十一代将軍に就任し、西の丸奥女中が大奥に入るため、大奥女中たちはそこを去らねばならない。おちさたちお手付け中臈は全て断髪して虎ノ門養成所へ集められ、そこで将軍の胤を宿しているか否かの“肌検め”の結果、その兆しがなければ戒名が与えられて、終生の住居である比丘尼屋敷へと移される。そこは死ぬまで将軍家治を回向して暮らさねばならない格子なき牢獄であった。粗末な生活、厳しい監視と戒律の下、おちさは、何人もの女が比丘尼屋敷で朽ち果てていく姿を目の当たりにする。その頃、おしのは将軍家斉の嗣子の乳母として大奥に返り咲いていたが、夫との仲は冷え切っていた。一方、おちさは父の命日に外出を許された際、おしのの夫・遠藤弥左衛門の暖かさに触れ、道ならぬ愛を抱くようになっていた…。