ダウン症青年の日常をストレートかつコミカルに描くインド映画『アハーン』より、日本版オリジナル予告編が解禁された。
ヒンディー映画で初めてダウン症当事者が主役を務める作品。ダウン症の青年・アハーンと妻に見放された中年男性・オジーが、インド ムンバイの町をコミカルに駆け抜けていくサバイバル・コメディだ。監督は、ムンバイ出身ニキル・ペールワーニーで、本作が長編デビュー作となる。

日本版予告編は、タイトル名にもなっている、ダウン症の青年アハーン(アブリ・ママジ)が鏡の前でポーズを決める場面から始まる。アハーンの日課は、母が作るお菓子を配達すること。お得意様のアヌ(ニハリカ・シン)の元を訪ねると、その夫 オジー(アリフ・ザカーリア)と居合わせる。「ここは土足禁止なんだがな」と、土足で部屋に上がるアハーンをとがめるオジーと、お菓子を片手にその場に立ち尽くすアハーン。そんな、“でこぼこな二人の、邂逅(かいこう)”が冒頭に描かれる。
■『アハーン』日本版オリジナル予告編
“でこぼこな二人”は、チキンビリヤニ(インドやイスラム文化圏の炊き込み料理)をきっかけに秘密の協力関係を結ぶことになる。オジーは、度が過ぎる潔癖症を見かねて家を出て行った妻アヌと会うために。アハーンは外の世界へ飛び出すために。アハーンとオジーは、ふたりでムンバイの町に繰り出していく。軽妙な調子で展開される映像だが、「お金が要る、家を買って結婚したい」「妻が欲しい、子供も2人」とアハーンが切実な想いを吐露するシーンからは、彼が抱えている困難も垣間見える。

「10年後 何になりたい?」と尋ねられたアハーン。映像は、アハーンのキャラクターを象徴するシーンで幕を閉じます。オジーと出会い、外の世界に飛び出していったアハーンを待っている未来とは――。
今回完成した日本版オリジナル予告編は、ダウン症青年のアハーンが直面する現実を真摯に見つめながらも、希望とユーモアも忘れない本作の魅力を余すことなく伝える。映し出されるのは、壮大な演出も、力強い劇伴も伴わない、ムンバイのゆるい日常。インド映画にして、“あんまり歌って踊らない”本作だが、車中のアハーンとオジーが体を前後に揺らして絶妙にリズムを刻むシーンには、思わずふふっと笑みがこぼれます。
9月5日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開